「収穫」とひと口にいっても、作物によって作業内容が異なりますが、格段に効率化してくれるのがハーベスターと呼ばれる農業機械です。ハーベスターにはさまざまな種類やメーカーがあり、知識がないと選ぶのが難しく感じるかもしれません。
この記事では、ハーベスターの種類やメーカーなど、基礎知識から選び方まで詳しく紹介します。
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収穫に使う機械はすべて「ハーベスター」
ハーベスターを調べると農業機械だけでもさまざまな種類が出てきてしまい、どれが適切な機械なのか判別が難しいでしょう。
ハーベスターは収穫機全般を指すため、同じ名前の道具でも使用する業種や作物によって形状が異なります。最も大きく異なるのは、農業と林業の違いです。田畑と森というまったく違った環境では、使用するハーベスターの特徴が変わってくるのです。
収穫物で選ぶハーベスターの種類
ハーベスターの種類は具体的にいくつに分かれるのでしょう。ここでは林業、稲作、その他の主な作物のハーベスターで分け、それぞれの特徴を解説します。作物ごとにどんな違いがあるのかをチェックしましょう。
林業でのマルチな活躍が可能なハーベスター
林業で使われるハーベスターは「高性能林業機械」とも呼ばれ、幅広い作業を担います。バックホー(いわゆるユンボ)を林業用にしたもので、バックホーとの違いはクローラーと先端の仕様です。
林業用は、山間部でも移動しやすいように高めのクローラーになっています。通常のバックホーでも、ハーベスターのアタッチメントを取り付けることで林業の作業で使用可能となります。
一方、林業でハーベスターとよく比較されるのがプロセッサーですが、できる作業の幅に違いがあります。プロセッサーは切り倒した木材の枝払い、測尺、玉切り(規定の長さに切断する作業)を行うのに対して、ハーベスターは立ち木を切り倒す伐倒作業から玉切りまで行うことができます。
林業機械のなかでも作業の幅が広くコストも高いため、林業の花形とも言われています。
稲作の脱穀と選別が可能なハーベスター
国内で最もメジャーなのが稲作用のハーベスターです。米の収穫には複数の作業が必要で、手で行うのは大変な負担がかかります。稲作用のハーベスターは刈り取り、脱穀、籾の選別の三段階に分けられる収穫作業のうち、脱穀と選別を担います。
類似の機械としてコンバインがありますが、ハーベスターと違うのは刈り取りからできるという点です。収穫作業を1台でこなせる利便性の高さがある反面、その分購入費用が高く、複雑な仕様のため故障時のリスクも高いというデメリットもあります。
また、ハーベスターは小型のものからあるのに対して、コンバインは大型が主流です。狭くて複雑な形状の農地が多い日本では、コンバインよりもハーベスターの方が適している場合があります。
芋・玉ねぎ・サトウキビなどで活躍するハーベスター
特定の農作物に特化して、収穫を効率化するためにハーベスターも開発・製造されています。
たとえば芋(ポテト)のハーベスターは、芋堀りを行い持ち上げる過程で土を落とすことで選別しやすくなっています。選別台が付いていて、機械の上で選別作業まで行えます。玉ねぎ用の機械は収穫、選別台に加えて、根と葉を切り落とす機能も付いています。
沖縄でよく生産されるサトウキビのハーベスターは、刈り倒し、裁断、不要な部分(トラッシュ)の除去、集茎と、4種の作業を一手に担えます。
他にも酪農で用いる飼料用のハーベスターなど、さまざまな種類の作物に特化したハーベスターが製造されています。
ハーベスターの走行形式の違い
多様な作物用に開発されているハーベスターですが、走行形式は大きく2つに分けられます。それぞれの特徴を知り、自分の農地に合ったタイプを選びましょう。
1台で作業が完結できる「自走式」
自走式のハーベスターはエンジンを搭載しています。移動用にキャタピラーのようなクローラーが付いており、圃場を自走しながら収穫作業を行います。自走式のものは作業を1台で行えるタイプが多く、その分大型です。
タイヤではなくクローラーが付いた本体1台で作業を行うため、湿田など土質が柔らかい場所でも走行がしやすく、土を踏み固めてしまう心配もいりません。
1台で作業が完結できる自走式ハーベスターは、乗用型と手押し型があり、手押し型は小規模な農場でも使えるコンパクトなサイズ感のものも販売されています。
小型で導入しやすい「けん引式」
けん引式は、トラクターの後ろに取り付けて引っ張ることで作動するタイプです。自走式よりも小型のため、広大な土地でなくてもハーベスターを導入することができます。
稲作の場合は自走式、手押し式、けん引式のすべてのタイプの展開がありますが、対応する作物によってはどれか一部のみの場合もあります。走行タイプが選べるかどうか、事前に調べてみるとよいでしょう。
ハーベスターの主なメーカー
ハーベスターは、作物によって性能や特徴が異なり、得意なメーカーが異なります。ここでは、作物ごとに主なメーカーを紹介していきます。
林業用ハーベスターのメーカー【コマツ・住友建機など】
油圧ショベルに近い形状の林業用ハーベスターは、国内では建機メーカーのコマツや住友建機が製造しています。
コマツのハーベスターは、林業先進国のスウェーデン生まれのハーベスタヘッドを日本専用の改良を施したうえで、コマツのベースマシンにドッキングしたものです。住友建機はフィンランドの林業機械メーカーであるケスラー社と提携し、日本向けの開発を行っています。
国内で開発されているほかは、海外メーカーのハーベスターヘッドが輸入されており、代表的な輸入元としては、日本に似た急斜面の多いオーストリアのメーカー、コンラート社の「ウッディ」が挙げられます。
稲作用ハーベスターのメーカー【クボタ・ヤンマー・ホンダなど】
国内メーカーが多く製造しているのが、稲作用のハーベスターです。農業機械の主要メーカーから販売されているので、他の作物のハーベスターと比べて探すのが簡単です。
国内メーカーが製造している稲作用ハーベスターは、手押し型の自走式が主流です。日本に多い棚田や狭小な農地でも使いやすいように、小型で操作性の良いものが多くなっています。
なかでもヤンマーの自走自脱PKシリーズは小さなボディとシンプルな操作、作業スピードと美しさが揃い、人気のモデルとされています。
その他の作物用ハーベスターのメーカー
国内で生産数の多い作物は、それぞれに特化したメーカーが製造しています。酪農の飼料用作物のハーベスターだとヤンマーや、海外メーカーの製品の輸入も行われています。
国内メーカーの製品で多く見られるのが芋用のポテトハーベスターです。なかでも東洋農機は日本初のけん引式ポテトハーベスターTOP1をはじめとした、さまざまな種類のハーベスターを開発しています。
松元機工は、乗用型の茶摘採機を中心とした農業機械を設計製造しています。さとうきび、豆、野菜と複数展開しているのが特徴的ですが、製品名はハーベスターではなく「収穫機」です。ハーベスターで探しても見つからないときは、収穫機をチェックしてみましょう。
ハーベスターの運転に免許・資格は必要?
ハーベスターの種類と主要メーカーが分かったところで、購入前に知っておきたい免許や資格についての基本を解説します。
林業で使うハーベスターの運転に必要な資格
ハーベスター関連で最も資格が重要になるのが林業です。ハーベスターのベースとなる油圧ショベルの運転には、資格が必要なほか法定検査も必要です。資格は機械の重量によって異なるため、当てはまるものを確認しておきましょう。
● 資格(機体重量3t未満):車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転特別教育
● 資格(機体重量3t以上):車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習
● 法定検査:車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)特定自主検査
私有地での操作だけであれば上記の資格を所有し、法定検査を行えば問題ありません。
稲作・畑作用ハーベスターは公道走行時に免許が必要
農業用のハーベスターの場合、自分の田んぼや畑といった私有地で運転するのに資格は必要ありません。ただし、倉庫から圃場への移動などで少しでも公道を走行するなら、運転免許が必要です。
● 小型特殊免許または普通免許
全長4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m(安全フレーム付きは2.8m)以下、最高速度15km/h以下の条件を全て満たした場合
● 大型特殊免許または大型特殊免許(農耕車限定)
上記の条件をひとつでも上回る場合
● けん引免許
車両総重量750kgを超える大型車両をけん引する場合
農機具の運転に必要な免許について詳しく知りたい人は、以下の記事でも解説しています。
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トラクターの運転に免許は必要?法律違反にならないためのチェックリスト
稲作用ハーベスターの中古価格相場
ハーベスターのなかでも、ここでは代表的な稲作用の価格を目安として紹介します。国内メーカーの新品だと65万~120万円程度かかるのに対して、中古だと10万~30万円程度で探せます。
機能が充実したハーベスターの導入は決して安い買い物ではありません。中古製品を上手に選んで、コストを抑えましょう。
なお、紹介した中古価格は、中古農機具の買取販売店あぐり家の2023年5月時点の情報です。
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